さがしもの 角田光代

  • 2019.11.23
さがしもの 角田光代

大学生の時に紙幣が変わることがあった。新しい紙幣が出回ってすぐに学校の近くの酒屋で焼酎を買って新しい五千円札を出したら、お釣りに古い紙幣で九千円ほど返ってきた。おそらくまだ見慣れない新しい紙幣で五千円と一万円を間違われたのだと思う。学生だった僕は、お店の人にお釣りを間違えていることを言い出せず、そのままお店を出てしまった。

「さがしもの」は「この本が、世界に存在することに」を文庫化するにあたり改題したものである。古本と古本屋のお話で構成されている。本とのめぐり逢いというのはギフトのようなもので、その本と出合うことができるからには何か出会うべきわけがあるように思った。この本を読むと自分が探していたものを発見できるかもしれないし、自分が何を探していたのかに気付くことができるかもしれない。そして、ずっと忘れていたけど心のどこかで覚えていたことを思い出すことになるかもしれない。この本を読み終えた時、あの時の酒屋に行って五千円をお返ししようと思った。

本: 「さがしもの」 角田光代
ブックカバー: PLAZA