2021年2月

ミ・ト・ン 小川糸

  • 2021.02.13

バルト三国のひとつラトビア。人々は大切な人や行事のためにミトンを編む。お嫁に行くときもたくさんのミトンを編んで持っていく。お葬式にも特別なミトンを編む。ソ連に占領されていた約半世紀の間、自分たちの歌を歌うことも踊ることも民族衣装を着ることも許されなかった。けれどミトンを編むことだけは咎められなかった。ミ・ト・ンは、この国に生まれた女の子マリカの一生をミトンを通じて描いたおとぎ話のような少し不思議な […]

庭 小山田浩子

  • 2021.02.10

僕の実家は二度の引っ越しをして、現在の家は三件目である。小さい頃に住んでいた家の裏庭にはぐみの木があって周りにはよくヘビがいた。塀の向こう側では近所のホルモン屋が二匹の山羊を飼っていた。中学生の時に四方を田んぼに囲まれた家に引っ越しをした。高校を卒業するまで住んだけれどもどんな庭だったのか全く記憶に無い。覚えているのは夏の夜に田んぼのカエルが一斉に鳴き出しそれはそれはにぎやかだったこと。そして暮ら […]

マスク 菊地寛

  • 2021.02.08

首都圏に二回目の緊急事態宣言が発令された時、約100年前に世界を襲ったスペイン風邪をめぐる小説「マスク」を読んでいた。そしてその数日後に今度はスペインのお客様から職場に海外宅急便で荷物が届いていた。中身はなんと「マスク」。マスクのシンクロニシティ。 スペイン風邪が流行した100年前は第一次世界大戦の最中。世界的に感染が流行したパンデミック型のウイルス感染症だが、戦況に影響することを恐れて各国は自国 […]