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800日間 銀座一周 盛岡督行

  • 2024.05.06

銀座でたった一冊の本だけを販売する「盛岡書店」を営む森岡さんが、コロナ渦に資生堂の「花椿」に連載をした「現代銀座考」。かつて最も華やいで最もモダンであった時代の銀座と、現代の銀座を、タイムマシーンに乗って行ったり来たりすることのできる銀座の図鑑。銀座の魅力は街と店と人。日本中あちこちに「銀座」と名の付く通りがあるけれど、やはり東京の銀座はホンモノの銀座である。変わりゆく銀座と変わらない銀座、昔の銀 […]

禅と食 枡野俊明

  • 2024.05.02

何も豪華な食材が必要なわけではない。その時期にあるもの、そこにあるものを使い、そこにいる人と自分のために、ただ料理をすることだけに集中して作る。何も豪華な食器が必要なわけではない。質素な器に季節を盛り、感謝をし、気持ちを落ち着かせて丁寧にいただく。粗食であればあるほど、そこには贅沢な空間と時間が出来る。現代の生活でついつい忘れてしまいがちな、とても大切な本当のごちそうを改めて教えてもらった。 本: […]

日本で見られる現代アート傑作11 秋元雅史

  • 2024.04.30

10年近く前のことだと思うけど、豊島の美術館に行った。その時は雨だった。音や風などの自然を感じるために設られた美術館には、しっとりとした雨音と真っ白な空気が何とも言えず神秘的だった。帰りに船着場の隣の質素なうどん屋で麺を啜っていたら、女将さんが「美術館に行ってたん?」と話しかけてくれた。「あの変な形にコンクリート打つのって、途中で休憩せんと一気に流しこまんといけんのよ。天気予報とか確認しながらね、 […]

羊と鋼の森 宮下奈都

  • 2024.04.19

学校に設置してあるピアノを調律する音を偶然に聞いてしまった生徒が、その後に周囲の人に育ててもらいながら一人前の調律師となってゆくまでのお話。偶然に見てしまったことの衝撃によって人生が決定づけられることは、実際にあることだと思う。夢を追うことは苦しくて辛いこともあるけれども、それ自体がとても尊いことで、そのことを応援し見守る人たちの心も美しい。夢を追う全ての人の森に何かが宿り何かが育ち、そして何かが […]

飛行機の乗り方 パラダイス山元

  • 2024.03.03

旅の移動は遅ければ遅いほど面白いと思っている。新幹線よりも迂回してでも在来線特急で、特急よりも各駅停車で、もしも船で行けるならば迷わず船へ、列車の選択はなし。そんな風に思っているので、飛行機は仕事でどうしても乗らないといけない時以外は使うことがない。離陸するとどこにも寄らずにいきなり目的地に到着してしまうところがどうも好きになれない。コロナ渦で仕事で移動することがすっかり無くなってしまったので、い […]

おしょりん 藤岡陽子

  • 2024.02.15

僕は毎朝30分かけて中学校に通っていた。僕の家は田んぼの中にぽつんとあり畦道は途中で行き止まりになっているため、中学校に行くためには幹線道路に出て遠回りして歩いてゆく必要があった。ところが冬になると、田んぼに降り積もった雪がかちかちに凍る朝が時々あり、その日は中学校まで田んぼの上をほぼ一直線に歩いてゆくことができた。そのことを「空の上を歩く」という呼び方をしていた。山を隔てた反対側の町ではこのこと […]

天ぷらにソースをかけますか? 野瀬泰申

  • 2024.01.21

毎日のように食する和食であるが、和食の定義について考えたことは一度も無かった。ただ漠然と、食する地域や国民を定めることで、他の地域や国民の食するものと区別しているくらいにしか思っていなかった。特別展「和食」という博覧会に行ってみて、それまでの自分の考えが実に浅はかなものなのか分かった。和食とは、手に入る食材を最大限に利用し、発酵など自然の摂理に従い、季節や気候と調和させながら、食事を作り楽しむ工夫 […]

木になった亜紗 今村夏子

  • 2023.12.30

「あひる」を読んだ時から、こういう発想をする今村夏子さんは一体どういう方なのだろう?と不思議に思っていた。「木になった亜紗」を読んでますますこの不思議が大きくなった。ところが、あとがきに、日記を人に読まれなくするためにビーフシチューに漬けてから処分をすると書かれてあり、全てが納得できた。それくらいのことを思いつかない人でないと、このようなお話を書くことはできないだろう。そう言えば、小学生の時に給食 […]

汽車旅12か月 宮脇俊三

  • 2023.12.27

上野発、札幌行きの寝台特急「北斗星」の運行を終了するというニュースが流れ、家族で「北斗星」に乗って北海道旅行に行くことになった。ラストランとなるほんの数日前の寝台特急券を4人分手に入れることができ、その雄姿を写真に収めようという大勢の鉄道ファンに見送られて「北斗星」は上野駅を出発した。上下二段のベッドが向かい合った半コンパートメントでは、上に登ったり下に降りたりワクワクソワソワしながら家族それぞれ […]

たのしい・わるくち 酒井順子

  • 2023.11.25

いやあ、他人の悪口は楽しい。いつでもできる。どこでもできる。誰とでもできる。どんなエピソードも全て悪口にすることができる。ネタなんて尽きることはない。ということは、自分も悪口のネタにされているということだ。いつも悪口を言われている。あちこちで悪口を言われている。みんな悪口を言っている。何をしても全て悪口のネタになってしまう。でも安心して良い。誰も面と向かって悪口を言ってこない。悪口は隠れてするから […]

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