四万十川 あつよしの夏 笹山久三

  • 2020.08.17
四万十川 あつよしの夏 笹山久三

この本を読んで無性に四万十川に行きたくなった。江川崎という町の役場でカヌーを借りることができるというので、四万十川を下ってみようと思い立った。大学を卒業して最初の夏のことであった。同級生を誘った。高知駅で待ち合わせをした日は豪雨だった。高知から江川崎に行く列車からは豪快な四万十川が車窓の左右に方向を変えて見えたが、増水のため沈下橋は見えなかった。二人とも就職して間もない時でお金もなく江川崎の駅を宿替わりに使わせていただいた。当時はまだそういう時代だった。江川崎に到着しても川に降りることすらできず、何もすることがなかった。翌日も川に降りることもできず一日を駅の待合室で過ごした。その翌日も同じ。結局、夏季休暇の最終日前日まで豪雨が続き一度も四万十川に降りることなく、休暇の最終日に宇和島で闘牛を見物して夏が終わった。その数年後に四万十川に行った。今度は天候に恵まれて予定どおりカヌーで川を下ることができた。しかし、どういうわけか僕には駅で数日を過ごしただけの旅の方が印象に残っている。

本:「四万十川 あつよしの夏」 笹山久三
ブックカバー: 武蔵野市立吉祥寺美術館 きくちちき絵本展