陰翳礼讃 谷崎潤一郎

  • 2019.06.20
陰翳礼讃 谷崎潤一郎

日本人の美意識というものは暗さの体験に基づいている。それゆえに日本の家屋や料理はそもそも暗さを前提に創られている。そして家や調度品や食べ物だけではなく、恋や旅など生きることすべてが暗さとの調和によって成り立っている。西洋の美とは本質的に異なるのだ。この本を読んだ日から、電気の無い生活をしてみたくなったが、現代の生活に慣れてしまっている者にはそれは無理な話だ。

京都の円山公園の中に「吉水」という数寄屋造りの旅館がある。以前にあるカフェで偶然ここの女将とお会いした時から、京都に泊まるときは「吉水」に泊まろうと思っていた。畳の部屋には暗い照明が灯っていて、テレビはない。辺りはひっそりと静まりかえっている。雨がしとしとと降っており、縁の外の木々はしっとりと濡れている。この心の落ち着く空間こそが谷崎純一郎の陰翳礼讃の美というものだろう。あの場所でもう一度読んでみたい。

本: 陰翳礼讃 谷崎潤一郎
ブックカバー: 赤坂もち 青埜


(京都、吉水)