深い河 遠藤周作

  • 2022.01.08
深い河 遠藤周作

僕はこの本を読んでインドに行った。正確にいうと、妹尾河童さんの「河童が覗いたインド」を読んでインドに興味を持ち、横尾忠則さんの「インドへ」を読んでインドに行ってみたくなり、「深い河」でとどめを刺された。目的地はバラナシ。インドの宗教観では水が南から北へ移動するのはとても有り難いことらしく、ヒマラヤからベンガル湾へ流れるガンジス川が南から北へと蛇行する場所に位置するバラナシは沐浴の聖地となっている。沐浴にやってくるだけではなく、人はバラナシで火葬して灰を流してもらうのが最も幸せな死に方だと思っており、火葬をするためにインド中から人が集まる。河岸では数メートル間隔で火葬。街の中は沐浴と火葬にやってくる人たちを目当てに物乞いをする人たちが道端に大勢いて、恵んでもらった食べ物を道路に置いて食べている。その食べ物を牛や犬もつついて一緒にたべる。物乞いをしている人たちは、片腕が無かったり、片脚が無かったり、中には両手や両脚の無い人もいる。不謹慎な言い方だけど、人間にはこんな種類が色々あるのだと驚く。カーストにすら入ることの出来ない人たちは職業に就けないので物乞いをして生きていくしか無く、五体満足で生まれてくると(物乞いをしやすくなるように)親に手や脚を折られてしまうのだそうだ。僕は自分が今見ている風景が夢なのか現実なのかあるいはあの世の世界なのかが全くわからなくなり、かなり混乱した。これがバラナシである。そしてこのバラナシを舞台にした「深い河」、遠藤周作さんの三大作品「海と毒薬」「沈黙」の中でも特に好きだ。

本: 「深い河」 遠藤周作
ブックカバー: クルス(長崎)