博士の愛した数式 小川洋子

  • 2025.06.24
博士の愛した数式 小川洋子

月に一度おじさんだけが上野のお寺に集合をして編み物をするというシュールな会に参加をしていた。年齢や職業や編み物スキルもバラバラ。教室ではなく、ただ黙々と編むためだけに集まり、終わると帰ってゆく、平和なニッターの集いであった。その中には、理学博士やシステムエンジニアといった理系頭脳のニッターもいて、奇想天外なトリック仕掛けを編み込んで腰を抜かしそうになるくらい驚くことが何度もあった。その人たちに言わせると編み物は頭の中で数式のように考えることができるらしい。僕はいつも端っこの方で目立たないようにこっそりと一桁の足し算くらいのものを編んでいた。今では少しだけ上達して九九の掛け算くらいにはなったかもしれない。そのうちにルートの計算くらいはできるようになるのだろうか?

本: 「博士の愛した数式」 小川洋子
ブックカバー: We are kintters