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つむじ風食堂の夜 吉田篤弘

  • 2024.12.09

横浜の港が見える丘公園の麓の住宅地に居酒屋の千葉屋がある。このお店は魚屋さんが経営しているので、とても美味しい魚を食べることができる。そのことが理由がどうかはわからないが、このお店にはたくさんの猫がいる。肴がテーブルの上に出てきて、さあ頂こうかなと思うと、客の横やテーブルの端っこにさっと猫が現れて肴を見つめる。ただし、ここの猫たちはとても躾が良くできていて、決して肴に手を出すことはないのだ。猫に申 […]

花の百名山 田中澄江

  • 2024.12.04

あれは確か大学二年から三年に上がる春休みだったと思うので、今から40年も前のことです。学生寮に暮らしていた、先輩のYさんと同期のS君と僕の3人は、悩み事と言えばその日の酒の肴を何にしようかと思う程度のことで、お金はなかったけれど時間だけはたっぷりと持て余しておりました。その日はポカポカ陽気でしたので、その夜の酒の肴になるツクシを採りに行こうということになり、三人で太宰府に出掛けました。天満宮と竈門 […]

やわらかい頭の作り方 細谷功 ヨシタケシンスケ

  • 2024.11.23

もうかれこれ30年以上も昔、職場の先輩のUさんは Tarzanの最新号が出るたびに買ってきて熱心に読む。「健康になろと思て読んでんねん」と言われるのだが、一向に健康の方角に進んでいるようには見えない。それもそのはず、Tarzanを読むだけで、生活習慣を変える気配は全く無いのだ。 「ヨシタケシンスケ展かもしれない」展で購入した「やわらかい頭の作り方」。頭が固いのには頭の固い理由がある訳で、どうやら思 […]

木に学べ 西岡常一

  • 2024.10.23

飛鳥時代に建てられた法隆寺の大修理や薬師寺の復元などの大仕事を果たした宮大工の西岡常一棟梁が語る、木のこと、山のこと、鉄のこと、瓦のこと、水のこと、地面のこと、気候風土のこと、道具のこと、作法のこと、食事のこと、酒のこと、しきたりのこと、師弟関係のこと。宮大工の仕事というのは、生き方そのものだ。 木の癖に注意をして使えば気も喜び長持ちし、弟子の性格に注意をして使えば弟子も育つ。現代の日本人が忘れて […]

夏の庭 湯本香樹実

  • 2024.09.22

学生時代に月の家賃が300円の学生寮に住んでいた。学生寮の建物は敷地の広さに対してゆったりと建っており、空いたスペースは近所の子供たちの格好の遊び場となっていた。その遊び場に面した一階の部屋にはTさんという先輩が暮らしていた。とある日曜の午後、Tさんの窓の先に転がってきたボールを取りにきた少年三人は、窓から昼を過ぎても寝ているTさんを覗いて「死んでんじゃないの?」と話していた。気配を感じたTさんが […]

橙書店にて 田尻久子

  • 2024.08.25

熊本に行きたい。熊本に行かねばならない。熊本市内の商店街で雑貨屋と本屋兼喫茶店を営む田尻久子さんが、どのようにしてこの街にお店を開き、どのようにして人とつながっていったのかを記したエッセー集が「橙書店にて」。これを読んだら、実際にお店に行ってみたくなるし、田尻さんと会ってお話を聞いてみたくなる。街から本屋がどんどんと減っているが、田尻さんのような店主や橙書店があちこちの街にあったら世の中は随分と楽 […]

ヨモギドラゴンの階段話

  • 2024.07.28

草木染の一点ものの洋服のブランドBotanic Greenの直営店、原宿「ヨモギドラゴン」のご協力で、お店に上がる階段スペースに、ブックカバーと本を展示をさせていただきます。階段は暑いですので、本は店内に持ち込んでご自由にお読みください。クラフトビールやソフトドリンク、店主の自家焙煎の珈琲もご注文いただけます。 最寄り駅は「原宿」「明治神宮前」。神宮前交差点近く、キャットストリートの一本裏の更に細 […]

ランウェイ・ビート 原田マハ

  • 2024.07.05

自分たちで洋服を作って自分たちで販売をしている友人の夫婦がいる。自分たちの工房で糸や布を染め、自分たちの信頼する人に後工程となる縫製や刺繍などを依頼して洋服を作り、自分たちの信頼できるお店でPOPUP SHOPを開き、自分たちの手で販売している。 地球の遠く離れたところで安く作って大量に輸入し、季節が終わって売り逃したものを大量に廃棄するという洋服の作り方が市場のほぼ全てな現代に、エコロジーでロー […]

本日は、お日柄もよく 原田マハ

  • 2024.06.14

四月のとある日、午後から結婚式なのだろうか、桜の下で新婚夫婦の写真撮影が行われていた。撮影が終わり一団さんが引き上げていった場所にお嫁さんのご両親と思われる夫婦が残り、正装のお父様が桜を背景にした留袖のお母様を撮ろうとしていた。「お撮りしましょうか?」と声をかけると、「あっ、そうですか。すみませんね。いやあもう本人たちよりも親の方がウキウキしていて、恥ずかしいですね。」と言いながら一眼レフを渡すお […]

800日間 銀座一周 森岡督行

  • 2024.05.06

銀座でたった一冊の本だけを販売する「森岡書店」を営む森岡さんが、コロナ渦に資生堂の「花椿」に連載をした「現代銀座考」。かつて最も華やいで最もモダンであった時代の銀座と、現代の銀座を、タイムマシーンに乗って行ったり来たりすることのできる銀座の図鑑。銀座の魅力は街と店と人。日本中あちこちに「銀座」と名の付く通りがあるけれど、やはり東京の銀座はホンモノの銀座である。変わりゆく銀座と変わらない銀座、昔の銀 […]

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