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クサリヘビ殺人事件 蛇のしっぽがつかめない 越尾圭

  • 2019.07.18

スポーツ中継をライブで見ることができず、やむを得ず録画して観ようと思い、ビールを買って帰ってテレビの前に座ったところで、誰かにゲームの結果を告げられてしまったとしたら、きっとその結果を告げてしまった人のことを恨んでしまうだろう。苦い珈琲でも淹れて、さあ今から楽しみにしていたミステリー小説を読むぞ!と思ったところに、その小説のあらすじや感想を言われたら、これまたその人のことを恨んでしまうだろう。運の […]

私の食物誌 吉田健一

  • 2019.07.15

福井県というところは実に食べものの旨いところである。冬は越前蟹。観光客は雄の楚蟹(ズワイガニ)を食べる。地元の人は専ら雌の勢子蟹(セイコガニ)を食べる。雌がお奨めだが、漁ができる時期は限られている。夏は鯖。串に刺した丸鯖を炭火で焼いたものを魚屋の店頭で売っている。半夏生には地元の人は焼き鯖を食べる。若狭ではカレイやフグが旨い。厚揚げ。福井の厚揚げと他の地域の厚揚げは掌に載せて比べると簡単に違いがわ […]

ヒルクライマー 高千穂遥

  • 2019.07.09

自転車で坂道を上るヒルクライムレース。偶然にそのレースを見てしまったがために、翌週からヒルクライムにのめりこんでしまい、家族関係に問題を作ってしまうまでに至った中年の男。長距離陸上界の将来を期待されていたのに、駅伝に興味がなく大学を中退してしまい、偶然に兄の友人から譲り受けたロードバイクが機でヒルクライムを始めることになった若者。キャバクラで働きながらヒルクライムを続けている女子。オリンピックを目 […]

雪国 川端康成

  • 2019.07.07

伊豆で年を越したことがある。修善寺の新井旅館に泊まった。明治5年創業の老舗旅館。建物もほぼ当時の状態で使われている。新井旅館は大きな池の上に建っている。創業当時はまだポンプというものが無かったので、宿の周りに川から水をひきその水圧を利用して地下から温泉の湯を汲み上げたのだそうだ。玄関を通り池に面した幾つかの渡り廊下を渡って部屋に案内される。奥の部屋に辿り着くためには廊下を何度も曲がりそのたびに違う […]

リーチ先生 原田マハ

  • 2019.07.04

日本をこよなく愛し日英両国の芸術の発展に功績を残したバーナード・リーチが、柳宗悦、濱田庄司、河井寛次郎たちと友好を深めた明治から大正の実話を織り交ぜてフィクションに仕立てた小説。 バーナード・リーチは昭和に入って陶芸の指導で鳥取を訪れています。鳥取の医師である吉田璋也が柳宗悦を師として仰いでいたことから、バーナード・リーチは濱田庄司と共に鳥取を訪れたとされています。吉田璋也がつくった鳥取民藝美術館 […]

ボックス 百田尚樹

  • 2019.06.29

僕は格闘技をやったことは無い。やろうと思ったことも無い。これから先もやらないと思う。もっと言うと興味が無い。痛いのが嫌だ。幼い頃からずっと、これからもずっと。柔道もやりたくない。畳はゴロゴロするためのものだ。相撲もやりたくない。裸で土の上に叩きつけられるなんて考えただけで御免だ。レスリングも嫌。にらまれるだけでも怖い。空手。瓦を割って何が楽しいんだろう。その中でも特に、敵と殴り合いをやってその過程 […]

めんたいぴりり 東憲司

  • 2019.06.27

これは食のルポルタージュであり、戦後の博多を描いたノンフィクションでもあり、めんたい作りにのぼせ上がった男のコメディでもあり、そして何と言っても家族の壮絶な愛のドラマである。ひとつの食べ物の背景にこんな汗と涙が存在するなんて。読んで涙が出るのは、めんたいがぴりりと効いた証拠たい! 本: 「めんたいぴりり」東憲司 ブックカバー: 明太子 ふくや

陰翳礼讃 谷崎潤一郎

  • 2019.06.20

日本人の美意識というものは暗さの体験に基づいている。それゆえに日本の家屋や料理はそもそも暗さを前提に創られている。そして家や調度品や食べ物だけではなく、恋や旅など生きることすべてが暗さとの調和によって成り立っている。西洋の美とは本質的に異なるのだ。この本を読んだ日から、電気の無い生活をしてみたくなったが、現代の生活に慣れてしまっている者にはそれは無理な話だ。京都の円山公園の中に「吉水」という数寄屋 […]

残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法 橘玲

  • 2019.06.15

リビングのテーブルの上に何日も前から一冊の本が置きっ放し。カミさんと長男は、僕が置きっ放しにしてると思ってたらしい。僕は本のタイトルからして次男の本だと思っていた。次男に確認したいけど、生活時間が違っていて、同じ屋根の下に暮らしているのに一週間に一度会うか会わないかのすれ違い。久しぶりにバッタリと会ったので尋ねてみたら、次男も僕が置きっ放しにしていると思ってたらしい。そこまで皆んなして僕の本だと言 […]

TOKYOオリンピック物語 野地秩嘉

  • 2019.06.15

1964年に開催された東京オリンピックには、世界で初めて取り組んで時代を変えたアイデアがたくさん詰まっている。それまでは常に五輪マーク単独でオリンピックのマークとしてどの大会でも使用されていたのに、初めて東京オリンピックというその大会のためのシンボルマークというものが採用された。それが亀倉雄策さんの傑作だ。競技データをリアルタイムで情報処理して競技が終わった瞬間に速報が出ようなシステムを作ったのも […]

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