君がいない夜のごはん 穂村弘

  • 2019.11.23
君がいない夜のごはん 穂村弘

穂村さんってどんな人なんだろう。これは食べもののエッセイであることには違いないのだが、著名なレストランや珍しい食材あるいは海外の食事が登場するわけではない。普通の人たちが普通の日々に普通に食べている普通の食べもののエッセイである。それなのにひとつひとつの食事がとても魅力的に思うのは、そこにコミュニケーションがあるからだ。

大学生の時に住んでいた学生寮4階の向かいの部屋には、陳さんという香港からの留学生が毎朝アボガドを食べて暮らしていた。僕はアボガドというものを食べたことが無かった。当時はとても高価な食材で、近所のスーパーに売っているようなものではなかった。一体どんな味がするのか興味深々だった。ある朝、陳さんが「今日からアルバイトで東京に行ってしばらく帰って来ないから、僕の冷蔵庫に入っているアボガドは食べても良いよ」と言い残して東京に出掛けていった。その日の夜は学生寮の4階で盛大なアボガドパーティーが開催された。しかし、当時の僕たちにはアボガドを受け入れるほど脳細胞も舌も訓練されておらず、その美味しさが全くわからなかった。ずっと忘れていたそんなことを思い出した。

本: 「君がいない夜のごはん」 穂村弘
ブックカバー: 日清チキンラーメン
しおり: 永谷園のお茶漬け海苔