2025年

博士の愛した数式 小川洋子

  • 2025.06.24

対話型絵画鑑賞という小学校の図画工作の活動で、ピカソのゲルニカが数式まるでに見えると話していた生徒がいたと別のグループを担当したファシリテーターが話してくれた。僕には不規則的にしか見えないゲルニカであるが、一体どのように見ると数式に見えるのか不思議でならない。今度会ったらゆっくりと話しを聴いてみたい。そして、規則正しいテンプレートに数字だけが繰り返される地下鉄東京メトロの運賃ダイアグラムは、この生 […]

かぼちゃを塩で煮る 牧野伊三夫

  • 2025.05.28

一月にふらっと岩手県へひとり旅に出た。漆器の工房と鉄器の工場見学以外は全く予定を入れずの行き当たりばったりの旅だった。持って行った本も初日で読み終えたので、盛岡で本を買った。タイトルが僕の旅の仕方にとても似ていたので、「へたな旅」という本を選んで読んだ。牧野さんという方の書いたエッセイだった。 ところで、大学時代に暮らしていた学生寮のルームメイトの野中くんが、高校時代の水泳部の友人の話をよくしてい […]

円卓 西加奈子

  • 2025.04.08

兄を持つ友人は、兄ではなく兄以外の兄弟姉妹がいたら良かったのにと言う。妹を持つ友人は、妹ではなく妹以外の兄弟姉妹がいたら良かったのにと言う。姉と弟を持つ友人は、妹か兄が良かったと言う。兄と姉と弟と妹を持つ友人に聞いてみたら、兄弟は不要でひとりっ子が良かったと言う。学生時代の友人たちとの会話だけれど、その時のみんなに「円卓」を読ませてやりたい。 本: 「円卓」 西加奈子 ブックカバー: デカルネロカ […]

さようなら、オレンジ 岩城けい

  • 2025.03.29

人の感情は複雑である。自分には持っていないものを他の誰もが持っているように見えてしまう。全てを持っている人は存在しないのだけれど、その人が何を持っていないのかを知るにはそれなりの関係性を築く時間が必要である。そして、他の誰かの持っていないものを知ることによって、ようやくその人のことを大切に思えてきたりする。それなのに、人は自分が持っていないものを他の人に知られたくはなく、簡単に触れて欲しくないもの […]

雪の花 吉村昭

  • 2025.02.18

帰省をした折に行った銭湯の壁に映画のポスターが貼ってあった。別の日に別の銭湯に行ったら、やはり同じ映画のポスターが貼ってある。これはどうしてだろうと不思議に思い番台に尋ねてみると、どうやら福井県内のあちこちで撮影が行われ、実家のある街でも多くのシーンが撮られたとのことであった。それなら是非と思い立ち見た映画の後に原作を読んだ。福井にこんなにも人々の幸せのための献身的に活動をした医師がいたことを今ま […]

今夜、すべてのバーで 中島らも

  • 2025.01.17

お酒が、好きだ。お酒が、大好きだ。お酒が、たまらなく好きだ。アルコール依存症になってしまう人と、僕のようにお酒が心底好きな人との距離は一体どのくらいあるのだろう。もしかすると、僕はアルコール依存症に陥るポテンシャルを充分に備えているのかもしれない。そのリスクを常に頭の片隅に置いて忘れないようにしておくために、僕はこの本を時々読むことにしている。もしも、この本をお酒を飲みながら読むようなことになれば […]