2022年

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伊丹十三記念館ガイドブック

  • 2022.09.03

伊丹十三さんが大好きだ。伊丹十三さんの作る世界観が大好きだ。松山市にある「伊丹十三記念館」には、池内岳彦さんであり、音楽愛好家であり、商業デザイナーであり、俳優であり、エッセイストであり、イラストレーターであり、料理通であり、乗り物マニアであり、テレビマンであり、猫好きであり、精神分析啓蒙家であり、CM作家であり、映画監督である伊丹十三さんの世界がぎっしりと詰まっている。中村好文さんの設計した建物 […]

青春デンデケデケデケ 芦原すなお

  • 2022.08.28

僕の通っていた高校の裏にはお城のある山があった。高校の裏に山があるということは、その山で青春の匂いのする様々な行為が行われるということである。良い香りのしそうな行為もあれば、臭そうな匂いが漂う行為もある。運動部はトレーニングという名目で山に行く。音楽活動の練習も山が舞台。男子生徒と女子生徒が仲良くなって行くのは山の裏の方。体育祭の応援団の練習も山。授業をさぼってタバコを吸いに行くのも山。桜が咲いた […]

小隊 砂川文次

  • 2022.08.28

豪雪地帯の僕の生まれ育った町は高校二年生の冬に五六豪雪と言われる記録的な豪雪に見舞われた。毎日毎日屋根雪を下すうちに、庭や道路の雪の高さは屋根を越えてしまい、屋根雪を上げるくらいまで雪が降った。あちこちで「この下には電線が埋まっています」という立札を見た。確かその冬に何かの選挙があったが、春になって雪が融けたら、電柱のほぼてっぺんのところにポスターが貼ってあるのを見た。JR(当時は国鉄)も国道も閉 […]

あの夏の正解 早見和真

  • 2022.08.07

新型コロナウイルスの感染拡大対策で中止を余儀なくされた甲子園。この期間、高校球児たちとその指導者たちを取材し、彼らが何を考えどのように行動し何を感じたのかを記した一冊。ずっと憧れてきたものを掴み取るためにずっと頑張ってきたのに、新型コロナウイルスによって夢を奪われたり何かを見失ってしまったのは、何も高校球児だけではない。多くの若者が、そして若者だけではない多くの人にとって、大きな影響を受けたはずだ […]

陸王 池井戸潤

  • 2022.07.26

埼玉県行田市にある足袋メーカーがランニングシューズ開発に社運を賭け、人生で一度は負けを経験した人たちがそれを応援し、巨大な組織と目に見えない力に立ち向かってゆく。この小説がドラマ化された後に行田市にある和菓子の売れ行きが良くなったということだけれど、そのエピソードも含めて「陸王」のストーリーなのかと思ってしまう。 本: 「陸王」 池井戸潤 ブックカバー: 十万石

夏から夏へ 佐藤多佳子

  • 2022.07.16

2007年世界陸上大阪大会でアジア新記録を樹立した400mリレー日本代表チームが、その後の2008年北京オリンピックでメダルを狙うところまでメンバーを取材し、走ることの意味を問う一冊。夏から秋冬春と季節は繋がりやがて夏がやってくる。その間もバトンは継がれてゆく。この夏も世界陸上の季節がやってきた。この一冊のおかげで四継が楽しみになってきた。そして短距離競争の名物と言えば、毎年一月の十日戎に西宮神社 […]

北京の台所、東京の台所 ウー・ウェン

  • 2022.06.26

中国の食卓の楽しさを日本で教えているウー・ウェンさんの料理教室に行った。食を通じて、中国と日本の共通点や違いを理解することが出来てとても楽しい。中国では水道から出てくる水を綺麗とは考えていないので、油を使って食材に熱を通す料理法が発達した。精進料理も中国では油を使って調理される。精進料理の考え方は大陸から伝わったものだが、調理方法は全く異なる。そんな中国の精進料理を食べさせてくれるお寺が京都にある […]

津軽百年食堂 森沢明夫

  • 2022.06.18

日本全国47都道府県のうち行ったことの無い都道府県が、遂に青森県だけの状態になった。それから先に青森県を訪れる機会になかなか恵まれず、何年も経過してしまった。そしてある年に少し長い休暇を取れることになったので、迷うことなく青森県に行くことにした。東京駅から新幹線で新潟に行き、新潟から酒田へ日本海に沿って在来線の観光列車「きらきらうえつ」に乗って北上し酒田へ。秋田で一泊し、翌朝にまたもや観光列車「リ […]

家族終了 酒井順子

  • 2022.06.05

長い歴史の中で人口が爆発的に増えた期間がほんの一瞬だけあった。その期間の終わりにあたるのが現代である。日本の平民がお墓を作るようになったのは明治に入ってからのこと。先祖代々の墓となっているが、実は二代か三代が入っているに過ぎない。それなのにお墓をどうやって継いでゆくのか等、家族内のしがらみやそれによる親族間の揉め事が絶えない。私たちが今生きている時代の風習や規則はずっと昔からあるものではなく、明治 […]

しろいろの街の、その骨の体温の 村田沙耶香

  • 2022.06.04

無邪気で、弱くて、残酷で、怖いもの知らずで、勝気で、尖っていて、臆病で、正直で、ひねくれていて、そういう小学生の気持ちがほんの少しだけ大人に向かって変わってゆく段階が描かれている一冊。大人になると忘れてしまうけれど、子どもの頃には誰しもが持っていたそういう複雑な気持ちを思い出す。 本: 「しろいろの街の、その骨の体温の」 村田沙耶香 ブックカバー: 白松がモナカ

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