新和風のすすめ 秋岡芳夫

  • 2022.10.21
新和風のすすめ 秋岡芳夫
生まれ育った町と山を隔てて反対側の山あいの町は、昔から漆器や和紙や刃物や眼鏡などの産地で家内制手工業が集積された地域である。こんなにも技術密度が高い(人口密度は呆れるくらいに低い)町というのは日本いや世界で見ても極めて珍しいということで、ここ数年はこういう家内制手工業の工房をオープンにして人に見てもらおうという取り組みが行われている。これまで人に見せることがなかった仕事場なのに、何でも見て、何でも写真に撮って、何でも聞いて、何でも触って、良かったらちょっと作って行ってください、という真逆の取り組み。工程の話、材料の話、技法の話、商売の工夫、何を教えてもらっても歴史や技術の奥の深さに驚き、世の中は知らないことばかりで出来ているとつくづく思った。産業革命によって工業製品が出来てモノかどんどんと安く簡単に手に入るようになったけれど、やっぱりこういう技を次の世代にしっかりと受け継いでいかないと取り返しのつかないことになってしまう。
工業デザイナー秋岡芳夫さんは、大量生産大量消費の弊害を昭和の時代から提言されている。伝統工芸の工房を廻った後で読んでみて改めてその大切さに気付いた。

本: 「新和風のすすめ」 秋岡芳夫
ブックカバー: RENEW2021